2017年7月31日
クアルコムが買収したNXP
トラック隊列走行はすでに2016年に行われていたという事実
おはようございます。
トラックの隊列走行という技術があります。政府の未来投資会議の中で提示されている、2020年代までには実用化する新しい輸送システムです。これは2台目以降のトラックが自動運転になるということです。
どうやら自動運転車は一般の自動車よりも、長距離を移動し、高速道路を使うことの多い大型トラックの自動運転車が最も早く実用化されるようです。それは、そうした限定的な輸送路と条件があるため、制御がしやすいということのようです。
そしてそれを実証していたのが、Ottoという会社でした。日本では全くと言っていいほど(といってもウェイモはおろか、アルファベットも知られておらず、グーグルすら検索サービスのみの会社だと思われています。アマゾンは通販本屋ですね)知られていない会社ですが、この会社が昨年自動運転トラックの実証試験に成功し、事実上、自動運転車を「実用化」した会社なのです。つまり、自動運転車は昨年2016年にはすでに、商業的に稼働が可能な実用段階にあったということです。ところが、このOtto。もともとはグーグルの自動運転開発部門(ここが今年2017年にウェイモとして独立してアルファベットの傘下となった)の開発者のトップであるレバンドウスキ―氏が、そこにあった技術を持ち出して開発したものでした。その結果ウェイモに訴えられ、昨年8月にOttoを買収したウーバーによって解雇されるという、複雑な成り行きがあります。
元Google技術者の集結したOtto、トラックの自動運転に挑戦
UberのOtto自動運転トラックの最初の積み荷はビール5万本
Waymoが企業秘密の窃盗でUberとOttoを訴訟、元社員が14000件のファイルを無断ダウンロード
http://jp.techcrunch.com/2017/02/24/20170223waymo-sues-uber-and-otto-for-theft-of-trade-secrets/
Uber、Ottoの共同ファウンダー、レバンドウスキーを解雇―Waymo訴訟の社内調査への協力拒否が原因
そしてこの記事で重要なのは、後半で出てくるフィリップスの関連会社からスタートしたNXPセミコンダクタ―ズという会社です。この会社は、自動運転車のセンサーなどの制御に関する高精度の機器を開発しており、今回は「車両レーダーと併用し4倍のパワーを供給してくれる新たなマイクロ・コントローラー製品を発表」しました。自動ブレーキ機能、車線変更機能、自動アシスト機能まで含むレーダー探知機能ということですから、現在自動運転さ開発をしている企業がLiDARやセンサーカメラなどを使っている制御部分でのイノベーションを行っています。
さらに驚くのは、NXPをアメリカの半導体最大手のクアルコムが買収したということです。NVIDIAを多くの自動運転会社でポールポジションの位置にいる会社が提携し、テスラとたもとを分かったモービルアイをインテルが買収。CPUや自動運転車制御の覇権の部分で、今年の上半期だけで非常に大きな動きがありました。孫正義氏もNVIDIAの株を保有しており、昨年はARMを完全買収しました。
Ottoは自動運転トラックの実証には成功しましたが、隊列走行のデモはしていません。NXPは昨年2016年5月にすでにミュンヘンで隊列走行デモを行っています。
いずれにしろ、現安倍政権の未来投資会議が打ち出した、2020年以降のトラックの隊列走行の実現は、世界的な動きに反応した当然すぎる動きであり、また、こうした事実を日本人は全くと言って一般的には知らない、関心がない、その意義が全く理解されていないという、日本にとっては真の意味での厳しい現実があります。
半導体メーカーNXPが見せる自動隊列走行技術
SmartDrive MAGAZINE
2017年01月20日
https://smartdrivemagazine.jp/traffic/nxp/
2016年、Ottoの自動運転トラックが長距離走行と配達に成功。さらに、時同じくしてNXP、DAFトラック、TNO、Ricardoも車間間隔が0.5秒という画期的なトラック隊列走行に成功しています。
安全性と効率性など高い技術力を求められる自動隊列走行。そこにはどんな革新的な仕様や技術が隠されているのでしょうか。
NXPセミコンダクターズとは
拠点を構えるのはオランダのアイントホーフェン。NXPセミコンダクターズはエネルギー効率、コネクテッド・デバイス、セキュリティ、ヘルスケアの4つの世界的なメガトレンドに対応し、高性能ミックスドシグナルICのほか、ディスクリートなどの汎用製品をグローバルに提供している世界的な半導体サプライヤです。
株式会社フィリップス・エレクトロニクスジャパンが2006年に半導体事業を分社化し、新社名をNXPと命名。社名はNexperiaという製品ブランドが由来で、NはNext、XはExperience、PはPhilipsを表しています。同社はコネクテッド・カー、セキュリティ、携帯/ウェアラブル機器、IoTの4つの重点分野での技術革新に注力し、広範な業界の顧客企業の製品開発をサポートしています。
2015年12月にはモトローラ社の半導体部門が分離して設立されたフリースケール・セミコンダクタと合併。11000名以上のエンジニアを抱え年間売上高100億ドル(およそ1.2兆円)規模の企業が誕生しました。新生NXPは、「車載」「セキュリティ」「コネクテッド」の3つのカテゴリにフォーカスしていくことを強調し、車載半導体市場ではフリースケールの車載レーダーやセーフティ関連、NXPの強みであるキーレスエントリや車載インフォテイメント分野などでトップの独占を歩み始めたのです。
そして、携帯電話用の半導体で最大手の米クアルコムがNXPセミコンダクターズを買収したというニュースが新聞やメディアの見出しを飾ったことで、彼らは今後さらなる躍進を遂げようとしているのです。
Qualcomm(クアルコム)が見出したNXP の強み
2016年10月27日のこと。半導体ICメーカーの買収金額としては過去最高、破格の買収額でNXPセミコンダクターズを買収したQualcomm(クアルコム)、その額はなんと470億ドル(約4.9兆円)。新産業への参入の加速とスマートフォン市場への依存軽減が狙いです。
さらに、クアルコムは今回の買収後の両社の市場規模の合計を、2020年には1380億米ドルになるとみています。
買収の決め手となったのはNXPが発表した新製品でした。それは自動運転車両に関連する技術を確実に押し上げてくれるものとなっています。
自動運転車両市場では、車両レーダーと併用し4倍のパワーを供給してくれる新たなマイクロ・コントローラー製品を発表。自動ブレーキ機能、車線変更機能、自動アシスト機能まで含むレーダー探知機能は、より高いパフォーマンスと高い精度を保つことができるのです。この商品は既にテスト段階に入っており、2017年の後期には実現化が見込まれています。
2つ目の新製品はDAFトラック、ホンダ、シーメンスとの提携で開発された輸送トラック向けソリューションです。V2X(vehicle-to-everything)通信を用いてネット接続された自走トラックの反応時間を、2017年までに人が運転する車両に比べ30倍早めてくれるのだそうです。これについては次章にて詳しくお伝えしましょう。
ミュンヘンで行われたライブ路上デモ
少し前後しますが、フリースケールと合併して約半年後の2016年5月、NXPは自動運転システム開発用プラットフォーム「BlueBox」を発表しています。高性能プロセッサコアからなるプラットフォームは、パワフルなのに省電力で搭載性も高いもの。このBlueBoxで自動車メーカーの自動運転車の開発や、他社との差別化を図る戦略をサポートしていくとしていました。
そしてそれから半年後の11月には、NXPとDAFトラックはミュンヘン市内でトラック隊列走行のデモを実施。
交通の流れを大幅に改善するために、トラック隊列の位置に基づいて交通信号を自動的に適応制御するシーメンス製のインテリジェント交通信号を使用したトラック隊列走行のデモでは、高性能のカメラとレーダー・システムを備え、無線接続された自走トラックは、時速80kmで隊列走行で11mの車間距離を維持しました。
車間距離を確保する、乗用車が輸送車両間に入ってくるというような想定外の対応も、この技術によって人の運転時と比べるとはるかに効率的なマネジメントを行うことができるようになります。そして最大10パーセントの燃料効率向上、道路交通の安全性の向上、CO2、PM、NOXなどの排出低減が可能になるのだとか。
Cohda Wirelessとの新たなパートナーシップで、NXPはCohdaのV2X開発アルゴリズムを使うことが可能になり、両社の顧客も信号などのインフラ設備、レーダー探知、周囲の他の車両から得られる様々なデータを収集する「スマート判断システム」を搭載したりと、両社の技術を受けられるようになるのです。
EcoTwinトラック隊列走行プロジェクトのメンバーであるRicardo、TNO、NXP、DAFトラックは、隊列走行するトラックの車間距離を2017年にさらに40パーセント短縮するための研究に現在取り組んでいます。
DAFトラックのプロダクト・デベロップメント担当ディレクターのRon Borsboom氏は、「その実現に必要な研究開発課題はまだ多数存在していますが、2017年をめどに反応時間を改善した技術のデモを実施する野心的な計画に向けて、私たちはNXPと協力しています」と語っています。
自動運転トラックの今後
自動運転トラックによる最初の配送を成功させたOtto。高速道路部分である120マイル(約190キロ)という長距離を難なくトラック自身が快走するという快挙を成し遂げました。このOttoのトラックはLevel4自動運転基準を完全に満たした上で高速道路では一台のみで自律運転していますが、同じ自動走行でもNXPは隊列走行でのプロジェクトを進めています。
日本でも2016年9月同じように豊田通商がトラックの自動運転に向けた実証実験を近く始めると発表、隊列した複数のトラックを、1人の運転手で走らせる予定となっています。
運転手がいるのは先頭のみで2台目以降は無人となりトラック間の通信などから、先頭のハンドルやブレーキ操作に合わせて走る隊列走行。運転手が少なくて済むだけでなく、空気抵抗が小さくなって燃費も改善するため、人手不足の物流業界の救世主となり、環境を守る救世主となるのではないでしょうか。