2017年6月2日

 

 

 

 

 

 

アップルとグーグル、そしてトヨタがブロックチェーンを採用

 

 

 

 

アップルとグーグルの比較、豊田自動運転車開発にブロックチェーン採用の記事

 

 

 

 

 

 本日はアップルに関する続報です。アップルとグーグルの比較記事ですが、やはりイノヴェーションの現実的波が押し寄せているIT業界には、グーグルとアマゾンの勢いに対して、アップルという巨人の動きが鈍いという観測が広まっているようです。

 

 

 先日のインテルの憂鬱の記事に関しては、日本では全くと言っていいほど知られていません。アップルとインテルという巨人が今後どのような旋回を見せていくのかは、すべてのビジネスを営む人々にとっては無視のできない流れといえます。

 

 

 後半の記事はトヨタの自動運転車に関するものです。GPUの「謎の企業」NVIDIAとの提携を発表したトヨタが今度はAIに並ぶ革新的技術ブロックチェーンを自動運転車開発に採用していくというものです。

 

 

 ビットコインの技術であるブロックチェーンがなぜ自動運転車に必要なのか。これまでその部分は全く報道がありませんでした。しかし、非常に興味深い情報が書かれています。走り出したトヨタという印象を受けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AIシフト遅れるアップル、今からグーグルに勝てるのか?[Google I/O 2017]

 

 

 

 

 

 

 

BUSINESS INSIDER

May. 19, 2017

https://www.businessinsider.jp/post-33724

 

 

 

 

 

ピチャイCEOによる画像認識のデモ。画像の下を見ると、単なる「花」ではなく、認識した被写体の詳細候補が表示されている。

 

 

 

 

 日本時間5月18日未明から、グーグルが本社隣で開発者向けイベント「Google I/O 2017」を開催している。昨年、親会社アルファベット社傘下のグーグルCEO、スンダー・ピチャイ氏が「モバイルファーストからAIファーストへ」と宣言を行っていたが、今年の基調講演はまさに「AIファースト」を地でいく内容であった。

 

 

 基調講演のなかで来場者が最も驚いたのが、機械学習による画像検索技術「Google Lens」だ。会話型のエージェント機能である「グーグルアシスタント」と対話している際にカメラで花を撮影すると、その花がなんという種類かを教えてくれる。また街中でレストランの店頭を撮影すると看板などを読み取り、そのレストランに対するネットの評価をすぐに表示する。

 

 

 さらに、日本語で書いてある「たこ焼き」という看板を写すと、文字を英語に変換。「どういった見た目なのか」とGoogle Assistantに質問すると、たこ焼きの画像をネットから引っ張り出してくれる、といった芸当も見せてくれる。

 

 

 画像を認識し、検索するだけでなく、画像処理自体も進化している。例えば、金網越しのグラウンドで野球をしている少年の写真から、金網をすべて消してしまうといったこともできるようになるという。

 

 

 

 

金網をAIが自動補正で消してしまうデモ。これには参加者も驚いていた。

 

 

 

 

1日12億枚の写真を画像認識するグーグル

 

 

 こうした画像認識技術を支えるのが、グーグルのクラウドとAIの技術だ。すでにAndroidプラットフォームの月間アクティブユーザーが20億にもなるという。Googleフォトに関しては、月間アクティブユーザーが5億人を超え、毎日12億枚の写真がアップロードされ続けている。

 

 

 グーグルはそれらの膨大な写真を解析し、どんな被写体がいて、何が映っていて、どんなシチュエーションなのかを徹底的に分析している。その積み重ねによって写真ストレージサービスの「Googleフォト」では、画像認識の精度がさらに向上していくのだ。実際、ユーザーがGoogleフォトで写真を管理し、検索で「桜」などで呼び出すとびっくりするぐらいに高い精度で写真を選び出すことができる。

 

 

 もちろん、iPhoneでも同様の写真検索機能は備わっている。しかし、その精度においてはグーグルのほうが一枚上手のように感じる。グーグルは写真の内容をクラウドで処理・分析しているが、アップル・iPhoneは本体内での処理で完結している、という手法の違いだ。

 

 

 5億人が毎日持ち寄る12億枚の写真を分析して画像認識するグーグルと、個人情報とは切り離した画像を使って学習させたアルゴリズムを使い、iPhoneの限られたパワーだけで画像認識をするアップルとでは、精度に大きな開きが出てきても仕方がない。

 

 

 アップルとしては「個人の情報は端末内で完結させる」という徹底した個人情報保護主義を貫いているのだが、一方でグーグルは「便利ならいいじゃん」というスタンスで突き進んでいる。このあたりは「ハードウェアのメーカーとしてスタートしているアップル」と「ネット検索が起源のグーグル」という出身の違いが大きく影響しているのだろう。

 

 

 

グーグルが狙いを定める10億人の新興市場

 

初日基調講演で精力的なプレゼンテーションを披露したグーグルのスンダー・ピチャイCEO

 

 

 

 グーグルは、Android陣営の拡大戦略も積極的だ。「次の10億人を狙う」として、新しい新興市場向けのプラットフォーム「Android Go」をスタートさせる。新興国向けの廉価版スマホやタブレット向けのOSで、本体のRAM容量が1GB以下であっても、快適に最高のスマートフォン体験ができるように設計されているという。

 

 

 実際、GoogleアプリやGoogle Playストアで配信されるアプリ自体も軽量版になっている。例えば、「YouTube Go」では通信回線が遅くても視聴できるように動画の解像度とコマ数を落としたものを見られるようになるという。また通信回線につながなくてもいいように、ユーザー間の端末同士の通信で動画をコピーし合うといった使い方も可能になる。

 

 

 Chromeブラウザに関しても流れるデータを抑制する機能を持ち、「使用ユーザーの累計データ減少容量が1日あたり750TBにもなる」というほどの効果があるという。グーグルはこれまで新興国向けには「Android One」として、廉価版スマホを作れる環境を提供してきた。だが、最近では日本国内でワイモバイル向けに、「最新のAndroid体験を常に提供する」というコンセプトで、Android Oneのブランドが使われるなど、若干、開始当初よりもスタンスがブレつつある。今回のAndroid Goは徹底的に新興国向けに焦点を当て、「本体のRAM容量は小さくていい」「アプリも軽量版」「流れるデータも少ない」というエコな設計で、安価な端末代とランニングコストを実現したかったようだ。スマホの普及に鈍化が見える中、これからは「いかに新興国市場を開拓するか」が重要になってくる。

 

 

 

アップルは「プレミアムの看板を下ろせない」

 

 

 そんななか、アップルは「プレミアムブランドのスマホ」という位置づけであり、なかなか新興国に攻めきれていないのが実情だ。なにせ、最新モデルとなるiPhone7は新品で10万円前後もする高額な商品だ。

 

 

 アップルでは販売台数を増やそうと、iPhone SEといったコンパクトな製品を出し続けたり、インドでiPhoneの生産に乗り出したりしている。「認定中古整備品」のように、アップルが中古端末を公式に整備して販売することで、安価にiPhoneを売るといった苦肉の策も行っている。

 

 

 アップルとしては、新興国向けにiPhoneを安価で売りさばけばブランドイメージが傷つくし、また可処分所得の少ない人をユーザーにしても、アプリが売れなければ、手数料も入ってこない。それであれば、いっそのことシェア獲得を諦めるという考えもできるだろう。

 

 

 その点、グーグルは広告ベースで商売をしているだけに、とにかくユーザー数が欲しくてたまらない。そのため、新興国向けにAndroid Goを手がけることで、なんとか次の10億人を獲っていくつもりなのだろう。

 

 

 

アップルは保守的企業になったのか?

 

 

 ここ最近のアップルは「絶対に失敗できない企業」になっているようで、どちらかといえば保守的な戦略のように思える。いま話題のスマートスピーカーは、すでにアマゾンとグーグルに先を越されてしまっている。6月のWWDCで発表されるのではないかという噂が出ているものの、それでもグーグルから1年近く遅れるのは避けられない

 

 

 つい最近もウォッチで他社に先を越されている。iPhoneで他社をあっと言わせた10年前が懐かしい

 

 

 その点グーグルは、Androidをテレビにも広げ、自動車のインフォテイメントシステムにも進出し、Androidのエコシステムを大きく広げている。振り返ってみれば、Google Glassのような黒歴史も数多いが、失敗を恐れ果敢に挑戦する姿勢は、今も昔も変わらないように思える。

 

 

 果たして、攻めのグーグルに対して、アップルはどんな戦略で切り返してくるのか。来月(2017年6月)5日から開催されるアップルの開発者向けイベント「WWDC」で何が語られるのか。今から注目と言えそうだ。

 

 

 

 

 

 

 編集部からのコメントです。

 

 

 アップルの未来を見据えた視点からの膠着状態(企業としては頂点に達しています)は、以前の記事でも言われているので、特に新しいものではありません。

 

 

 この記事ではむしろグーグルのほうに、歯がゆいものを感じました。来場者が最も驚いたのが、機械学習による画像検索技術「Google Lens」だったというところなのですが、ついにグーグルが「スマート・グラス」を出すのかと思ってしまいました。

 

 

(「AR―「拡張現実」とは何か?」http://www.noteware.com/ar.html

 

 

 上記のアドレスの5月19日の記事にありましたが、AR技術の究極的目的は「外の他の世界とうまくやりとりしているように見える3次元画像が投影できる「スマートメガネ」を開発すること」ということです。

 

 

 しかし、今回のグーグルレンズは、花の種類を教えてくれるとかレストランの評判を教えてくれるとか。食べログやウィキのような機能のレンズです。これだけではこれまでのネットサービスと変わりません。しかし、この記事で誰もが着目していなければならない、今後の常識ともいえる「ライフログ」のことが書かれている「1日12億枚の写真を画像認識するグーグル」の見出しのセクションが非常に重要です。

 

 

 アップルがハード出身、グーグルがネット出身という違いを、両者のスタンスの差として見事に簡潔に説明しています。グーグルは今、ほぼ完成されつつあるAI=ディープラーニングの画像認証技術の精度を高めるため、検索サービスという20年にわたって構築してきた圧倒的な規模の「エコシステム」(実物ではアマゾンがこれを構築している)を背景に、画像認識の精度を上げている。今回のグーグル・レンズはその本の一端としてとらえることができます。

 

 

 グーグルは(尊雄出自が国防相とかかわりがあるのではないかともいわれていますが)、明らかに「21世紀のインフラ企業」です。アマゾンもイーロンマスクの企業もそう。しかし、アップルは良くも悪くもこのままでは「20世紀インフラ企業」ではないでしょうか。

 

 

 堅実な古き良きメーカーとしては個人情報を重視して、映像や画像は自社の端末のみで完結しています。しかし、それでは今後、全く勝負にならないでしょう。クラウドとエッジという大きな視点で物事を見て、ビッグデータの中の非構造化データをディープラーニングで解析し、「エコシステム」をこうちくする、という流れに乗れない企業は、たちどころに息詰まるというのが現在の観測です。そしてそれは現実となるでしょう。

 

 

 記事の後半のアップルに関しては、先端を行く大企業は絶対に先端を行かなくてはならない宿命にある「過剰品質」のニュアンスが感じ取れます。アップルのブランド化(アップルは革命時で、40年間ディスラプター=破壊者であり続けました)は、アップルが「破壊」(ディスラプト)される側に回っていることを表しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トヨタ、ブロックチェーンを自動運転車開発に導入へ――MIT始め多数の企業と提携

 

 

 

 

 

 

TechCrunch

2017年5月23日 

 

http://jp.techcrunch.com/2017/05/23/20170522toyota-pushes-into-blockchain-tech-to-enable-the-next-generation-of-cars/

 

 

 

 

 

 Fordが新CEOを任命、経営陣を一新して車作りでの未来志向を明確化させたのと同じ日に、トヨタは次世代テクノロジーの採用に踏み切ったことを発表した。

 

 

 Fordの人事は自動運転車、電気自動車製造でこれら分野のトップ企業に追いつこうとする努力だが、トヨタ、正確にはTRI(Toyota Research Institute)は自動運転車、電気自動車を現実化する上で非常に重要な選択を行ったといえる。

 

 

 MIT〔マサチューセッツ工科大学〕のメディア・ラボと協力して、トヨタはブロックチェーン・テクノロジーを専門とする一連のソフトウェア・パートナーと提携したことを明らかにした。ブロックチェーンは分散暗号化台帳テクノロジーで、bitcoinのような暗号通貨のベースとなっている。トヨタはこの提携により、ブロックチェーン・テクノロジーを次世代自動車開発に適用する方法を探るとみられる。トヨタは消費者が自動運転テクノロジーを信頼することを可能にするソフトウェアの開発を目的としたプロジェクトを複数発表した。これには安全性に関して個々の自動車をモニタリングし必要な情報の配信することや悪意ある試みを排除することなどが含まれる。

 

 

 トヨタTRIの最高財務責任者で、モビリティー・サービスのディレクター、Chris Ballingerは声明で、.「安全かつ信頼性の高い自動運転車を実現するためには延べ何千億キロもの人間による運転データが必要になる。ブロックチェーン・テクノロジーを用いた分散台帳(distributed ledger)システムは個人オーナー、企業の運行管理者、自動車メーカー間での安全な情報共有を可能にするだろう。自動運転車の安全性、効率性、利便性が広く利用されるようになるという目標への到達を早めることが期待される」と述べた。

 

 

 当面、自動運転車が走行するつど運転データを共有する点にブロックチェーン利用の努力が集中されるという。自動車共有を容易にし、ユーザーが望めば走行距離ベースの自動車保険も利用できるようなツールの開発が目標だ。

 

 

 MITのメディアラボでデジタル通貨イニシアティブの責任者を務めるNeha Narulaは声明で 「ブロックチェーン・テクノロジーを用いてユーザーが自らの運転データを確実にコントロールできるプラットフォームを開発するプロジェクトにトヨタが深くコミットすることになったのは喜ばしい。安全かつ信頼性の高い自動運転車の実現に向けてさらに一歩を踏み出すために、業界の他のメンバーもこのプロジェクトに参加するようわれわれは期待している」と述べた。

 

 

 TRIはMITと提携するにとどまらず、ブロックチェーン分野で有力な他のスタートアップや企業ともコンソーシアムを組む。 BigchainDBは柔軟かつ規模の拡大に対応できるブロックチェーン・ベースの元帳システムの開発で300万ドルの調達に成功している。ベルリンを本拠とするこのスタートアップはトヨタが必要とする分散暗号化データベースを提供する。一方、テキサス州ダラスのOaken InnovationとイスラエルのテルアビブのCommuterzはブロックチェーンを用いたカーシェアリングと関連する支払いなどを処理するアプリを開発する。

 

 

 さらにトヨタはロサンゼルスを本拠するブロックチェーン・デベロッパー、Gemと提携し、同社がヘルスケア分野で開発した保険アプリを自動車保険に応用する。Gemはブロックチェーンを利用した暗号化元帳により、多種多数の分散した情報源からのインプットを記録し、保険金支払請求の自動処理に役立てるシステムを開発している。トヨタとの提携でGemは個別車両の使用の度合いに基づく従量制保険の開発にあたる。

 

 

 TRIのパートナー企業には以下の各社が含まれる。自動運転車のテスト走行における運転データの交換のシステムを開発しているBigchainDB(ベルリン)、新しいテクノロジーにより自動車へのアクセスや費用精算を含めたP2Pカーシェアリング・アプリを開発しているOaken Innovations(ダラスとカナダのトロント)、TRIと共同でP2Pカープール方式を開発中のCommuterz(イスラエル)、 Gem(ロサンゼルス)、テレマティクス自動車保険のTIMS(Toyota Insurance Management Solutions)などだ。TIMSはトヨタ、トヨタファイナンシャルサービス、あいおいニッセイ同和損害保険のジョイントベンチャーで、ユーザーに利便性が高いテレマティクス自動車保険を開発している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 編集部後記です。

 

 

 ブロックチェーンに関しては、弊社は勉強中ですが、単なるビットコインのような一般的には「怪しげな試み」という意識を超えて、主に行政文書や医療データなどの分散台帳化、暗号化を行うことで、事務分野のインフラ変更の中心となるということを把握しています。

 

 

 なぜそのような暗号通過や文書系の技術が、自動運転車の技術に欠かせないのかが不思議でしたが、要するにデータの共有を同時にリアルタイムに行うことができ、しかも情報セキュリティがしっかりしているからなのです。

 

 

 上記の記事中「安全かつ信頼性の高い自動運転車を実現するためには延べ何千億キロもの人間による運転データが必要になる。ブロックチェーン・テクノロジーを用いた分散台帳(distributed ledger)システムは個人オーナー、企業の運行管理者、自動車メーカー間での安全な情報共有を可能にする」という部分がすべてを説明していますね。

 

 

 さらにデータの同時共有が可能になれば、現在激しく進みつつある「インステック」(保険業界のフィンテック)で実施されつつある「走行距離ベースの自動車保険」の技術開発に寄与するということです。

 

 

「保険業界のIT革命「インステック」 PartⅠⅡ」

http://www.noteware.com/ins1.html

http://www.noteware.com/ins2.html

 

 

 これまでこのホームページではAIにブロックチェーン、フィンテック、インステック、ヘルステックと詳細な記事を掲載してきましたが、こうしたインフラ変更はすべてどこかでつながっていることが明らかになりつつあります。

 

 

 医療業界の「ヘルステック」に関しては、電子カルテや画像データをコンソーシアム型といって、限定的な地域や施設間で行うブロックチェーンが始まろうとしています。これは広域医療連携システムというこれからの医療(遠隔医療が中心)には欠かせないものとなるでしょう。