2017年4月17日
ハッカソンとは何か PartⅠ
おはようございます。
現在ブロックチェーンや遠隔医療行政や法規制に関する調査に取り掛かりながら、四苦八苦している当社ですが、少し趣を変えて、今回から2回、「ハッカソン」という新しい開発や教育の試みについての記事を掲載いたします。
「ハッカソン」とは「ハック」+「マラソン」という意味で「ハッキング・マラソン」です。といっても、ハッカーたちを集めて、どこかのシステムへの侵入を競うという物騒なものではありません。おそらくもともとは、そこから派生した試みなのでしょうが、これはプログラミング技術をグループを組んで合宿をしながらの耐久レース形式で、コンペをするもののようです。
ちなみに当社ホームページでは初出ではなく、2017年3月6日の記事の中で、すでに登場しております。
「ベルギーの行政サービスに「フィンテック」技術を採用実施」―「ハック」+「マラソン」=?
IT業界で流行「ハッカソン」とは
http://www.noteware.com/bel.html
これは今後開発の手段だけではなく、研修や教育方面にかなりの効果が期待できるのではないかと目されています。ハッカソンだけではなく、アイディアソンといって、考えを持ち寄って新しいものを皆で具体的に生み出していく試みです。
教育制度や社員研修制度の成果が上がらず、どうにも時代遅れの感がぬぐえませんが、こうしたワークショップ形式が今の日本でも必要なのではないかと思えてきます。事実、今回紹介する記事の中でも、企業はいち早くこうした取り組みを始めています。
すでに3年も前の記事ですが、日本ではまだまだ認知されていない試みで、名前など全く知られていないものなので、社内外に周知する一環として掲載いたします。
ハッカソン/アイデアソンとは? その類型と特徴、開催事例
2014年9月10日
http://www.buildinsider.net/hub/hackideathon/01
アイデアソンとハッカソンの概要と、その事例を紹介。多様なハッカソン/アイデアソンを理解しやすいように、「テーマ」「主催者」「目的」という切り口で分類する。
「ハッカソン」「アイデアソン」という言葉をご存じの方はどれくらいいるだろうか。IT業界を中心に、2013年ごろから話題を集め、2014年に入り、一気に全国各地へ広がり、盛り上がりを見せる共創型(Co-Creation)のイベントだ。
国内では当初、ITコミュニティ主催での開催が多かったが、最近では、docomoやTBS、ローソンといった大企業の他、経済産業省や自治体などの公的機関による主催も増えつつある。また、IT領域のみならず、商品開発や地域活性化、まちづくりなど、多彩な領域で開催が相次いでいる。
しかし、まだまだ聞き慣れないといった声や、いったいどんなイベントなのか、メリットや課題は何かなど、分からない点も多い。われわれCCLは、これまでさまざまな領域で開催されるアイデアソン、ハッカソンを直接、間接にサポートを続けてきた。
そこで今回は、前後編の2回に分けて、アイデアソン/ハッカソンの概要と、その特徴、運営における課題について整理し、われわれの経験を共有したい。
1. ハッカソン、アイデアソンって何?
「ハッカソン(Hackathon)」とは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語だ。エンジニア、デザイナー、プランナー、マーケティターなどがチームを作り、与えられたテーマに対し、それぞれの技術やアイデアを持ち寄り、短期間(1日~1週間程度)に集中してサービスやシステム、アプリケーションなどを開発(プロトタイプ)し、成果を競う開発イベントの一種を指す。
その始まりは、1999年ごろ、アメリカのIT企業やスタートアップ領域で使われ始めたとされ、旧Sun MicrosystemsやGoogle、Apple、Facebookなどが相次いで開催したことで知られるようになった。日本では当初、2011年に震災復興への貢献活動としてITコミュニティが手がけたほか、楽天やヤフーなどといったIT企業を中心に開催されてきたが、近年では、IT業界に限らずさまざまな領域での開催が報告されるようになっている。
「ハック」「ハッカー」は、日本ではネガティブなイメージで捉えられることも多い。しかし、元来、システムやソフトウェアを解析・改造するなど、「たたき切る」「切り刻む」「耕す」という本来の言葉の意味通り、「物事をブラッシュアップしていく」という意味合いを持つ。
「アイデアソン(Ideathon)」は、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、ある特定のテーマについて多様性のあるメンバーが集まり、対話を通じて、新たなアイデア創出やアクションプラン、ビジネスモデルの構築などを短期間で行うイベントのことを指す。
アイデアソンは、当初、「ハッカソンの事前会議」との位置付けや、「ハッカソンの導入部に行われるアイデア創出」を指していたが、近年では、アイデアソン単独で開催されるケースも増えており、地域づくりプランやレシピ・商品・サービスの開発、新規事業開発など、非IT領域で開催されることも多い。
2. 国内の開催事例の紹介
Hack Day/Hack U(主催:Yahoo! JAPAN)
Yahoo! JAPANは、エンジニアやデザイナーが有する創造力やアイデア、そして、情熱を解き放つ、ということを目的に、「Hack Day」「Hack U」と呼ばれるハッカソンを開催し(※各国のYahoo!でも開催されている)、プロトタイプ開発を行い、新たなサービス開発へつなげている。
24時間というタイムリミットと、90秒という短いプレゼンタイム。日常の業務から離れ、自由な発想で、アイデアと技術を駆使し、クリエイティブなサービスを具現化し、プロトタイプを発表する。Yahoo! JAPAN社内から300人近くが参加する人気のイベントとなっているという。
写真:Open Hack Day Japan 2ホームページより
Yahoo! JAPANが開催するハッカソンは大きく3つ。
1つは、Yahoo! JAPANの社員と一般の開発者、デザイナーが一緒になって組織や年齢の枠を超えて競い合う「Open Hack Day」。第2回目となった2014年2月の開催では、82組、339名が参加し、IDCフロンティアの“IaaS型クラウドサービス”やアフレルの“教育版レゴマインドストーム EV3”、NHKの“NHK番組表API”などのAPIの他、セイコーエプソン株式会社の“スマートグラス”などのデバイスが提供され、堂々と「歩きスマホ」ができるアプリケーション“SmartWalk”や、妊婦が電車を利用する際にみんなで助け合うマタニティバッジ“Mommy Ring - 妊婦さんお助けシステムなど、多数のプロトタイプが開発された。
この他、Yahoo! JAPANでは、グループ社員のみを対象とした、「社内Hack Day」も開催。さらに、大学と連携した「Hack U」を開催するなどしている。
この3つ以外にも、2012年に初めて開催された「石巻ハッカソン」にも、社員を数十名規模で参加させている。
デバイスハッカソン(主催:NTTドコモ×NTTドコモ・ベンチャーズ)
https://dev.smt.docomo.ne.jp/?p=tec.column.detail&article_id=14
NTTドコモ×NTTドコモ・ベンチャーズは、ハッカソンキャラバンとして、各地でハッカソンの開催を進めている。2014年6月21日~22日に大阪で開催された「デバイスハッカソンin大阪」では、ゼンリンデータコム:いつもNAVIのAPI(限定提供APIあり)や、日本経済新聞:日経電子版の記事などのAPI(ハッカソン限定提供)など、13社からデバイスやAPIが提供され、34名の参加者がアイデアソン→チームビルド→ハッキングを行った。
写真:docomo Developer supportホームページより
子どもたちの理解度や集中度を、顔認識機能などを活用してモニタリングする“ここみる”、HMDを通じ、ココロボ上にAR技術によりキャラクターが表示され、表情に反応して単純な音声を出力できるツール“My Girl”といったサービスプロトタイプが開発された。
http://www.innovation-osaka.jp/ja/events/event-reports/649
大阪市では、ハッカソンをハードウェアの世界に持ち込んだ、「ものアプリハッカソン」を1泊2日で行っている。中小製造業が集積する地場の強みに、ITの力を融合させた「新しいものづくり」を目指しての開催だ。
ハードウェア技術者、ソフトウェア技術者、デザイナー、マーケターなど44名が10のグループに分かれ、ユーザーの設定や提供価値の定義、製品コンセプトの構築などを、デザイン思考を取り入れたワークショップ形式で行い、チームでプロトタイプ開発を進めた。
2013年1月の開催では、仕事が忙しい子育て世代へ向けた“ホーム・プラネタリウム”や、感覚的なインターフェースを用い、パートナーとのけんかを防止するコミュニケーション機器などが成果として発表された。
また、ここで出会ったチームが起業して生み出した装着型のスマートトイ「Moff」は製品化され、2014年7月時点で、初期ロットの予約販売までこぎ着けている。2013年7月には、開催を引き継いだ大阪イノベーションハブで第2回目も開催され、36名、8チームが開発に取り組み、長時間のデスクワークによる姿勢のゆがみを解消する“The Butoon:TEAM KINTOON”や、仕事に忙殺されるビジネスマンに、気持ちを和らげる瞬間を提供する“ふっとオフ:チームふっとオフ”などのプロトタイプが開発された。
写真:大阪イノベーションハブホームページより
リクルートグループは、グループ企業が抱える事業課題に対し、社内外のエンジニアやUI/UXデザイナー、企画開発ディレクターがチームを組んで、自由にアイデアを出し合い、Webサービスやアプリケーションの開発を2日間で行う、ハッカソン“ReHack”を2013年11月~12月に開催している。
ここでは、リクルート各社が保有するAPIを用いて、仕事・住宅・旅行・ファッション・マーケティングなど、リクルートが得意とする事業領域のテーマを選び、テーマに沿った製品やサービスのプロトタイプ開発を実施する。
約32名の参加者が、まずは、1泊2日で、チームビルディングとアイデアソンを行い、整理されたアイデアを基に、開発を行い、中間発表を行った。そして、そこで相互にフィードバックや審査員からのコメントを受けて、1カ月後の最終プレゼンまでに、サービスのブラッシュアップを重ね、周辺の最も近い施設を1クリックで検索できるアプリ“スポッチ!”や、旅行のスケジュールを簡単に作成・共有できるアプリ“旅のしおり”、女性向けのニュースサイトなどのAPIを利用し、独自の情報をキュレーションする“chiroru news”といったWebアプリなどの多数のサービスプロトタイプが発表された。
オープンデータ・ハッカソン in Gifu(主催:岐阜県・株式会社CCL)
http://opendatacafe.blogspot.jp/2014/01/in-gifu-in-gifu.html
2013年11月20日~12月1日、岐阜県・株式会社CCLでは、オープンデータの活用を目指した、「オープンデータ・ハッカソンin Gifu」を開催し、岐阜県内はもちろん、静岡県、北九州市、山形県など、各地から33名が参加した。
「水とIT」をテーマに掲げ、観光・防災・歴史(教育)など、参加者が自由に発想し、アイデアを共有、アプリケーションのプロトタイピングを行い、成果発表では、地元のまちづくり活動などを行う市民審査員に登壇いただき、地域で暮らす住民目線でサービスの評価を行った。
オープンデータ・ハッカソンの様子
開発されたプロトタイプは、「岐阜の名水」というLinked Open Dataを使って、湧き水スポットを街歩きで探したり、風景画を撮影できるアプリ“湧き水ウォーク『湧歩』”、雨の音を楽しめるアプリで、降水量に合わせて6段階の音色が楽しめたり、室内にいても音だけで天気が分かったりなどの機能を搭載した“雨音”など、オープンデータを活用した遊び心のあるアプリのプロトタイプが開発された。
3. ハッカソン&アイデアソンの類型とその特徴
(HP参照)
編集部からのコメントです。
冒頭に「共創型」Co-Creationイベントとあります。これまで教育や研修は、座学にしても、資格取得、実地にしても、個人の個別的な成長と技術習得にのみ目を向けられていました。しかし、人間が本気でやる気が出るのは、スポーツ競技であったり、文化祭の出し物、共同創作といったグループで何か共通の目標を達成するときです。そこには孤独感はありません。
教育はすべて孤独の醸造です。何の連帯意識も、責任感も育ちません。当然リーダーシップなど最初から念頭にありません。それでグループワークの試みなどが行われてきましたが、ほとんどがやらされているものでした。
これまでの教育や研修をスポーツに例えると、すべて個人競技だったというわけです。スポーツや芸術活動には、個人競技であっても、時に団体競技が存在します。しかし、教育には個人だけを伸ばせばよいという大前提で今日まで来ています。
文章中に「アイディアソン」というのもあり、これは「対話を通じて」創造的な試みを行うとありますが、まさに対話、せめて会話がなくては、人間の創造性もやる気も、具体的な目的を組織で達成することなどおぼつかないのです。