2017年1月

 

グーグルの自動運転自動車会社Waymoとホンダの共同研究

 

 

 おはようございます。

 

 先日は、「グーグルの自動運転車開発断念か」「コネクテッド・カーとNTTの自動運転車開発」についての記事とコメントを掲載しました。コネクテッド・カーと自動運転、IoTやその他の意義についてコメントを述べました。

 

 グーグルは本当に自動運転車開発を断念したのでしょうか。続いて報道されたのが、グーグルが自動運転車開発部門を独立させて、ホンダと共同開発を始めるという記事でした。

 

 

 

 

 

 

ホンダ 完全自動運転で米グーグル開発会社と共同研究へ

 

12月22日 7時17分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161222/k10010815941000.html

 

 自動運転の開発競争が激しさを増す中、自動車メーカーの「ホンダ」はアメリカのIT企業「グーグル」で自動運転の開発を担う会社と、ドライバーが全く関与しない完全自動運転の実用化を目指し、共同研究に向けた検討を始めたことを明らかにしました。自動運転の開発で単独路線を取ってきたホンダがグーグルと手を組むことで世界的な競争は一段と激しさを増すことになります。

 

 発表によりますと、ホンダはグーグルの持ち株会社の傘下にあるウェイモが持つ自動運転用のセンサーやソフトウエアなどをホンダの車に搭載し、アメリカ国内の公道でドライバーが全く運転に関与しない完全自動運転の実用化に向けた実証実験を進めることにしています。

 ホンダは巨額の費用と時間がかかる自動運転の技術の開発をこれまでほぼ単独で進めていましたが、得意のIT技術を駆使して完全自動運転の実現を目指すグーグルと手を組むことで世界的な競争で優位に立つ狙いがあります。

 一方、グーグルは自動運転の分野ですでにアメリカのフィアット・クライスラーと提携していて新たな仲間を増やすことで自動運転システムのソフトウエアをできるだけ多くの自動車メーカーに供給し、主導権を握ろうという狙いがあるものとみられます。

 

 

 

 編集部からのコメント。

 

 非常に重要な情報が集約されています。これまでの日本の一連の報道のニュアンスに従えば、「グーグルが自動運転車開発を断念して、スタッフを整理して子会社化し、外部企業に投げ渡した」という印象を持ちかねない印象を受けます。そこに日本の誇るホンダがようやく登場。やはり「モノづくりの日本」がいなければだめなのだ、そういう印象です。

 

 子会社というのは、グーグルが開発部門を独立させてWaymoという会社に集約し、持ち株会社のAlphabet傘下に置いたということです。

 

 なぜこのような方針をグーグルがとったのか。次の一文「センサーやソフトウエアなどをホンダの車に搭載し、アメリカ国内の公道でドライバーが全く運転に関与しない完全自動運転の実用化に向けた実証実験を進める」がすべてを集約しています。

 

 つまり、グーグルはレベル4の完全自動運転車開発をすべて終わってしまった。あとは、自動車会社にだけ許された公道試験をおこなう環境がほしいだけ、ということです。そのために日本ではまだ、独立開発のみで、他社との提携を行っていないホンダに声をかけたという自然な流れになったということが真相だと思います。

 

 記事には、現在の日本の自動車業界の自動運転車開発状況について書かれています。

 

 

 

 

 

(記事の続き)

 

 

 

 日本の自動車業界はトヨタ自動車、日産自動車、それにホンダの3つのグループに集約されています。

 マツダと技術分野で提携したのに続き、スズキとも提携の協議を進めているトヨタ自動車のグループ。三菱自動車を傘下に収めた日産自動車のグループ。そして単独路線をとってきたホンダです。

 ホンダを除く各社は次世代の自動車のカギを握る自動運転や環境などばく大な費用がかかる先端技術の開発を1社単独で賄うのは容易ではないとして、提携の動きを加速させてきました

 このうち自動運転はこれまでの車作りにはなかった高性能のカメラやレーダーのほか人工知能やビッグデータなどの新しいIT技術が必要とされていて、ホンダは国内の2つのグループに比べて開発での遅れが指摘されていました。

 このためホンダは単独路線の方針を転換し、自動運転の分野で早くから開発に参入したアメリカのIT企業「グーグル」と組むことで巻き返しを図る狙いがあるものとみられます。

 

 

 

 

 

 編集部からのコメント。

 

 独立志向の強いスズキはどうしたのかなと思っていたのですが、トヨタと提携していたのですね。トヨタ日産の二大グループと世界のホンダ。VTR開発の時のような、日本の電機会社大集結をほうふつとさせます。

 

 一方のグーグルはというと、開発をあきらめたという動きは全く見られません。むしろ開発の終了と、実用化へ向けての動きが加速しているとみるべきでしょう。

 

 

 

 

(記事の続き)

 

 

 アメリカのIT企業グーグルが自動運転の開発に着手したのは今から7年前の2009年です。開発当初から、ハンドルやアクセル、それにブレーキなどを人が操作しなくとも、完全に自動で目的地まで走行できる車の実用化を目指してきました。

 グーグルが強みとしているのが、車自身が周囲の状況を把握してどう動くかを判断するのに欠かせない人工知能の技術です人工知能が走行実験で得られた膨大なデータを読み込み、実際の道路状況にあわせて車を動かす自動運転システムのソフトウエアを開発していて、この分野でほかの自動車メーカーを大きくリードしているとみられています。

 グーグルはことし5月、大手自動車メーカーフィアット・クライスラーと提携を発表し、自社以外の車にも自動運転のソフトウエアを搭載して走行実験を始めています。さらに今月には自動運転の開発チームを独立させて新会社「ウェイモ」を立ち上げ実用化に向けた準備を加速させています。

 

  今回、新たにホンダと提携する背景には自動運転システムのソフトウエアをできるだけ多くのメーカーに供給し、主導権を握る狙いがあるものとみられます。

 

 

 

 


 編集部からのコメント。

 

 この部分には、グーグルが他の自動車会社とIT外車を大きく引き離すアドバンテージが記述されています。ほかのIT系会社はせいぜい2014、5年からの開発のところ、09年から、レベル2や3などのような中途半端なものではなく、レベル4の開発を目指していたこと。

 

 何よりも人工知能、AI技術が他社を圧倒しているとみられます。これはグーグル翻訳(AIでは一番高度な技術で、いまだ完全には達成されていませんが)が著しく進歩していることからも見られるように、トロント大学の開発した「ディープ・ラーニング」技術をいち早く取り入れたのかもしれません。

 

 そして、「世界のホンダに助けを求めた」かのように、「モノづくりニッポン」の国民である私たちが誤った印象を抱きかねない部分は、2016年の5月にすでにフィアット・クライスラーとの開発提携の情報を見てわかるとおり、そんなことあり得ないのです。

 

 そこに開発部門を独立させた「ウェイモ」の意義があります。これはAlphabetグループのなかで完全に自動車企業として、業界の音頭を取る形にすることが見えてきます。

 

 記事の最後の部分が非常に重要です。「自動運転システムのソフトウエアをできるだけ多くのメーカーに供給し、主導権を握る」というこの部分に敏感に反応できた人は、今後の100年の世界が垣間見えた人かもしれません。少なくともオリンピックまでの3年間の流れを。

 

 これは「フィンテック」で金融業界を大分解させた「アンバンドリング」という出来事を、自動車業界でグーグルが実行するということだと思います。リーマンショック後のIT革命は「フィンテック」企業による「ディスラプターズ」(破壊者)の出現で始まりました。(詳しくは当社ホームページの「金融革命フィンテックとは何か」をご覧になってください。http://www.noteware.com/fintech.html)

 

 簡単に言えば、無料で新しい仕組みやシステム、サービスを供給し、その業態の中の機能を切り取ってしまうことです。例えば、銀行ATM(引き出しや預けはスマホで可能)や与信能力を無力化し、銀行はただ、金融業に付随した検査などの事務業務のみ(おそらくそれも今後AIによる自動化が近く可能になり、金融業に人間はいらなくなるでしょう)となるということです。

 

 あまりいい言葉ではないですが、こうした新たな動きは、業界の「チョップショップ」といっていいでしょう。21世紀の新たな100年がいよいよ始まったということだと思います。

 

 次回の配信をお楽しみに。

 

 

 

 

 

 

 以下、Waymo関連の記事URLと、Waymoの新テスト車であるミニバン「パシフィカ」の記事を載せておきます。欧米で共有されつつある新たな常識的質に当たる部分を黒字にしてありますので、その部分をよくご覧になってください。

 

 

 

 

 

Googleの自動運転車ユニット、Waymoとして独立クライスラーと提携して事業展開も

http://jp.techcrunch.com/2016/12/14/20161213googles-self-driving-car-unit-spins-out-as-waymo/

これがWaymoのテクノロジーで走る自動運転車クライスラーパシフィカだ

http://jp.techcrunch.com/2016/12/19/20161218heres-our-first-look-at-waymos-new-self-driving-chrysler-pacifica-minivans/

ホンダ、自立するバイク「Honda Riding Assist」世界初公開

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170106-00000059-impress-ind

 

 

 

 

 

 

Googleの自動運転車ユニット、Waymoとして独立クライスラーと提携して事業展開も

 

20161214日 by Darrell Etherington

http://jp.techcrunch.com/2016/12/14/20161213googles-self-driving-car-unit-spins-out-as-waymo/

 

 

 

 Googleは自動運転車事業を独立の企業としてスピンアウトさせる。今日(米国時間12/13)、GoogleからWaymoという新会社の名称が発表された。この会社名は「移動のための新しいやり方(a new WAY forward in MObility)」を開発するという使命を表したものだという。

 

 「われわれはAlphabet傘下の独立企業となった」とWaymoCEOJon Krafcikは今日開催されたプレスイベントで述べた。KrafcikによればWaymoは「公道の日常の状況下でハンドルもペダルもない完全な自動運転車を走らせた世界最初の会社」だという。これは昨年のオースティンの市街地で行われた実験を指している。

 

 この走行ではWaymoの上級エンジニアのNathaniel Fairfieldの友人で、視力を失っていることが法的にも認定されているSteve Mahanが単独で自動運転車をオースティンの公道で走らせた。 Mahanはそれ以前にも Googleの自動運転車のテスト走行を行ったことがあるが、いつも警察のエスコートを受けていた。しかしこのときはいっさい警察の保護を受けなかった。自動運転車はこの走行で4ウェイストップ(4方向一時停止)の交差点に正しく対処し、歩行者を避け、狭い道路を通過するなどの成果を挙げた。

 

 Googleは自動運転車ユニットのCEOに元現代北アメリカの幹部、Krafcikを任命し、元Airbnb、元TripAdvisorShaun Stewartも採用した。こうした動きは自動運転テクノロジーを技術的実験から収益事業の柱の一つに格上げするため、自動車会社を新規に立ち上げるなどの現実のビジネス経験がある人材を必要としたものと受け止められている。

 Krafcikは今日のイベントで、「われわれは公道ですでに200万マイル(360万キロ)以上の走行実験を行った。これから次の100万マイルに向けて走行中だ。しかし重要なのは現実の走行距離だけではない。われわれはコンピューター・シミュレーションで10億マイル以上走っている。[…]またマウンテン・ビュー、オースティン、フェニックスなどでゲストを乗せた走行を1万回も行っている」と述べた。

 

 Waymo(これまではGoogle X所属だった)は膨大な実験を繰り返してきたが、テクノロジーのトップ、Dmitri Dolgovによれば、適切な地図の製作、 挙動のスムーズさの改善、雪や大雨などの過酷な気象条件下での走行などまだ克服すべき課題がいくつも残っているという。

 

 Waymoの企業としての方向性についてKrafcikはいくつもの可能性を挙げた。

 

 「 [このテクノロジーは共有経済にも、交通機関にも大きな影響を与える。自動車メーカーだけでなく、トラック運輸などの公共輸送産業を変革するだろう。ロジスティクスにおける『最後の1マイル問題』を解決し、ゆくゆくは個人にも利用されるかもしれない。自動運転車はこうしたカテゴリーすべてにとってすばらしい意味を持つ」とKrafcikは述べた。

 

 Krafcikによれば新会社の努力の中心はテクノロジーの開発であり、必ずしも自動車自体の製造ではないという。これはGoogleの自動運転車戦略に関する従来の報道とも一致する。

われわれは自動運転テクノロジーの会社であり、自動車メーカーを目指してはいないということはこれまでも繰り返し明確にしてきたつもりだ。ときにはこの点について多少の混乱〔した報道〕が見られたが、われわれのビジネスは良い車を作ることではない。われわれのビジネスは良いドライバー〔システム〕を作ることだ」とKrafcikは付け加えた。

 

 

 

 

 

 Krafcikによれば、Waymoのビジネスは現在新しい「ビルド」の段階にあり、次世代のセンサー関連技術はクライスラー・パシフィカの最新モデルに搭載されるという。【略】

 

 Bloomberg火曜日の記事によれば、Alphabetに新しく誕生する自動運転車ユニットトは独立企業となり、自動車の共有利用事業でクライスラーと提携する。半自動運転によって乗客を輸送するサービスの展開には、手頃なサイズのミニバンであるパシフィカが利用される予定であり、2017年末には実用化が計画されているという。

 

 Googleはパシフィカをベースにした自動運転車のプロトタイプを100台製造することを発表していた。しかし今回の計画はそれより幅広いもので、自動運転車に必要とされるテクノロジーも一層高度なものとなるだろう。クライスラーの親会社であるフィアットはラスベガスで開催される今年のCESでパシフィカ・ベースの電気自動車を発表する計画だ〔現在のパシフィカはハイブリッド〕。この電気自動車がGoogleWaymoとの提携のカギを握るハードウェアかもしれない。オンデマンドの自動運転車サービスを展開するならば、通常動力よりもEVの方がはるかに実用的だろう。

 

 Alphabetグループ内の独立の事業会社となったことで、Waymoはテクノロジーの進展や収益性について、これまでよりさらに直接的に外部の風にさらされることになる。他の企業との戦略的提携や販売、ライセンスなどのビジネスモデルについて今後の動きを詳しく観察していく必要があるだろう。