2017年1月9日

 

グーグルが完全自動運転自動車の開発を断念の記事

 

 

 

 おはようございます。新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 

 新しい年、2017年が幕を開けました。今年から3年間、2019年いっぱいは、2020年の東京オリンピックに向けて、様々に新たな出来事が起こり得る時期を迎えます。パラダイム・シフト元年といっていいと思います。

 

 それはトランプ大統領の誕生や、ロシアと中国を中心としたユーラシア政治経済の勃興、Brexit発端によるEUの解体、世界なポピュリズム運動の勃興によって色づけられた、世界の新たな時代、真の21世紀が始まる年です。

 

 それは主にエネルギー政策の変更とIT技術の大きなイノベーションで進みます。当社ノートウェアもIT企業です。

 

 そこで本年から、世界的な最新のIT技術革新の試みに関する新聞記事の解説や分析、重要書籍の書評などを掲載していきます。

 

 週2、3回のペースで日本文の記事をスピーディにお届けできたらと思います。それと並行して週一回、英紙「フィナンシャル・タイムズ」や「エコノミスト」などからのITとそれに絡んだ政治経済情報の分析を通して、世界的価値のある大きな動きをお届けしたいと思います。

 

 また、これまで「フィンテック」や「シェア」といった書籍をご紹介しましたが、これから月1回のペースでそうした重要書籍をご紹介していきます。

 

 まず新年一発目は、ITタイタンである、ご存じグーグルの記事です。先月の記事ですが、グーグルが完全自動運転の開発を断念したという記事です。今週はこの自動運転に関するIT技術の動きと、社会変革の可能性に関する分析とオピニオンを掲載していきます。

 

 

 

 

 

Google: 完全自動運転型の自動運転車の開発を事実上の断念

 

by Stephen Woods

 

 

BUSINESS NEWSLINEの2016年12月16日の配信記事から

 

http://business.newsln.jp/news/201612130559450000.html

 

 

 Googleがこれまで進めてきた運転席のない完全自動運転型自動運転車(Self-Driving Car)の開発計画に関して、開発計画を抜本的に改めて、完全自動運転型の技術開発は諦めて、開発の方向性を運転アシスト機能に集約するという方針の転換を図ったことが大手ニュースサイト「The Information (Paywall)」による報道で明らかとなった。

 

 大手IT企業ではGoogleの他、Appleも自動運転車の開発を進めてきたが、Appleに関しても今年に入ってから、自社による自動車生産は断念し、自動車のハードウェア開発部門の従業員は全員、リストラを実施したことが伝えられていた。

 

 今回、Googleに関しても完全自動運転型の自動運転車の開発を事実上、断念したことが報じられたことを受けて、大手IT企業による自動運転車開発計画は、総崩れとなる可能性が強まってきたこととなる。

 

 Googleは、今後に関しては、FiatおよびChryslerと提携関係を結ぶことにより、2社を通じて、これまで開発を進めてきた自動運転技術を運転アシスト機能として提供を行うことを検討している模様となる。

 

 

 

 

 

 

 ノートウェア編集部コメントです。

 

 衝撃的なニュースです。自動運転はオートノマス・カー(自立走行車)とかドライバーレス・カーといわれており、いまだに言葉が統一されていませんが、とにかく「人間が運転しなくてよい車」ということで、日本ではまだまだ懐疑的見方が強い技術です。

 

 AIに対する根強い疑念を含めて、この記事中の大手IT企業による自動運転車開発計画は、総崩れとなる可能性という文言からは「あー、とうとう自動運転なんていう危険極まりない愚かな試みはムダに終わったか。やれやれ」という印象を持ちます。

 

 ただ私たちは、自動運転というものは、いったいどこが主に開発をしているのだろうという疑問があります。結論から言うとそれはグーグルです。そこでこの記事は衝撃的な意味合いが大きいのです。

 

 そして完全自動運転型の技術開発は諦めて、開発の方向性を運転アシスト機能に集約するという部分にあるように、加速・操舵・制動のどれかをIT技術がアシストするという、これをレベル1の自動運転技術といいますが、せいぜい、「踏み間違えによる突っ込み事故防止のための自動ブレーキ程度」、あるいはそれらの操縦の複数をIT技術がやってもらって、飛行機の自動運転程度のものでいい、これをレベル2といいますが、そういうものでいいという感想を持たれる人が多いと思います。

 

 Appleまでも大量に関連技術のエンジニアをリストラするという部分も、こうした見方に加速をつけるかのように思えます。

 

 自動運転は、レベル3が、通常は自動運転だが、ハンドルやブレーキ、アクセルはあり、危険時に人間が運転するというもの。レベル4が、操縦と制御のためのものは一切ない、完全自動運転です。

 

 そして今後に関しては、FiatおよびChryslerと提携関係を結ぶことにより、2社を通じて、これまで開発を進めてきた自動運転技術を運転アシスト機能として提供を行うという部分から、グーグルもアップルも、もう完全に「投げた」ということが決定的になった印象です。自動車会社に投げて、面倒になったので、途中まで開発した技術を売る方向に転換したように見えます。

 

 

 

 

(記事の続き)

 

 

 Googleは、持ち株会社となるAlphabetの設立に伴い、これまでに以上に、予算管理の厳格化を進めており、これ以上、自動運転車の開発を進めても、短期的に商業化できるメドは立たないとする決定につながったことが今回の開発計画の大幅な見直しつながったものと見られている。

 

 運転席のない完全自動運転型の自動運転車については、今月に入ってから米国の自動車産業の中核拠点となっているミシガン州が初の法制化に踏み切り、運転席のない完全自動運転型の自動運転車の公道走行試験が近く、可能となる予定となっている。

 

 しかし、ミシガン州の自動運転車法では、運転席のない完全自動運転型の自動運転車の公道走行試験を申請可能なのは、自動車メーカーに限定しており、自動車メーカーではないGoogleは、いくら開発を進めても完全自動運転型の自動運転車の走行試験は、現状の法制下では公道試験はできない状態に置かれている。

 

 一方、Googleが本社を置いているカリフォルニア州では、当初は、運転席のない完全自動運転型の自動運転車の許可に前向きの姿勢を示していたが、最近になり、反対論が浮上し、現在は、完全自動運転型の自動運転車については法制化のメドが立たない状態ともなっている。

 

 

 

 

 

 

 編集部コメントです。

 

 ここで日本ではまだあまりなじみのない「アルファベット」という会社名が出てきます。この会社はグーグルの子会社ではなく、いわば「親会社」です。2015年にグーグルを含めたグーグル傘下の子会社のサービスの自立性を促すために、設立された会社で、社長はそのままグーグルの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンです。

 

 この二人の名前も日本では全くなじみがありません。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツと同等かそれを上回る重要な人物です。アマゾン創業者のジェフ・ベゾズと一緒に覚えておくことは必須です。

 

 アルファベットの設立によって予算が厳格化されたからリストラという、日本人にとってはバブル崩壊以降、実になじみのある感覚です。「あ~あ、やっぱりな」という声が聞こえてきそうな感じですね。消しゴムの支給までケチられる感じです。

 

 また、ミシガン州が運転席のない完全自動運転型の自動運転車の公道走行試験を可能にする法案を通したのはいいですが、それは自動車メーカーに限定するという、これまた日本人には納得のいく「お上と法律の規制があるからしょうがない」という理由です。

 

 

 

 

(記事の続き)

 

 

 自動車業界では現在、より完全に近い自動運転車の開発競争が続いているが、Googleのものは、高価なライダー(Lidar)を主要センサーに使用する方式が採用されたものとなる。世界で初めて商用車に自動運転技術を導入したTeslaは、 コスト的に比較的安価な音波レーダーと光学カメラを併用する方式を採用しており、一見するとGoogleの自動運転車は軽自動車のようで安価なようにも見えるが、このままの商用化したら1台数十万ドルとイタリアのスーパーカー並みに高価な価格になる可能性も生じていた。

 

 そのため、ライダーを使用したGoogleの自動運転車は、技術的な問題点を克服できたとしても、乗用車として提供することは、非常に難しいという別の問題も抱えていた。

 

 ライダーを採用した自動運転車はUberがピッツバーグで実験運転を開始しているが、Uberの自動運転車は営業車となるため、多少コスト面で跳ね返ったとしても運転手のコストを削減し、24時間営業を行うことが可能と考えた場合には、採算性を合せることも可能となる。

 

 

 

 

 

 

 

 編集部コメントです。

 

 ここにあるライダ(Lidar)ーという技術は遠隔測定技術、リモート・センシング技術のことで、電波測定を光センサーによる測定に置き換えた技術です。地質や地震測定などに用いられているようです。つまり、赤外線センサーといった、我々に大昔からなじみのあるものと基本的には変わらないもので、対象からの反射、反響を測定する原理です。

 

 ITの先進的企業であるグーグルがこうしたものに頼るというのは、非常に疑問です。これに関してはまた後に譲ることとします。(つまるところ、そんなわけがないのです。)

 

 エジソンのライバルで有名だった発明家二コラ・テスラにちなんだ社名の「テスラ・モータース」も非常に重要な会社です。これもシリコンバレーに拠点を置き、会長はペイパル(最初のフィンテック企業。ブロックチェーンの実用化)共同創業者のイーロン・マスクです。この人物も重要です。

 

 テスラは基本的に電気自動車開発を手掛けています。テスラも光センサーをもとにして自動運転を開発しているという点では同じですね。

 

 ウーバーは配車サービス(ride-hailing serviceといいます)で破竹の勢いで成長している企業です。この会社は世界の交通インフラを完全に変革する企業と目されていて、グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトと並んで、今、非常に重要な会社です。この会社が世界から車の個人所有と駐車場、渋滞を一掃すると目されています。

 

 

 

 

(記事の続き)

 

 

 

 自動車業界では、車載センサーの負荷を削減するために、より精度の高い自動運転専用の道路地図を製作する動きも生じているが、全米隈なく、数センチの精度で道路地図を製作することは容易なことではなく(この方式の場合、道路工事や標識の変更が加えられる度にリアルタイムで地図も更新しなくてはならず、地図のメインテナンスも難しい面が発生する)、Teslaはこの問題を解決するため、各自動車の自動運転走行データをクラウド上に吸い上げてディープラーニングにかけることで、自動学習方式で、地図精度を高めることを行っている。

 

 

 

 

 

 

 編集部コメントです。

 

 光学センサーだけでは不足なので、地図の精度を高めるという内容です。ここにディープ・ラーニングという言葉が出てきましたが、これは「第3次AI革命」の技術で、人工知能のことです。何度も車を走行させることで、地図や地形を数センチ単位まで(たぶん数ミリかそれよりも小さく)測定して、自動運転になじませるということなのでしょう。

 

 ディープ・ラーニングは、自動運転車にとっては非常に重要な技術なのですが、実は、自動運転はこのディープ・ラーニングで行われるはずです。そこで、先ほどのグーグルがライダーという光測定技術を使っているという記事に、非常に違和感を覚えます。これに関しては、後に分析記事を載せます。

 

 ここで大事なのは、地図の測定です。先進的なマップを持っているグーグルなら、なおのことこの点にもとっくに留意を払っているはずです。しかし、ここでもっと重要なのは、地形・地図自体を根本から変革する事業が行われつつあるということです。

 

 それを行うのが、やはり先のグーグルの「親会社」であるアルファベット傘下の「サイドウォーク・ラブズ」(Sidewalk Labs)です。

 

 この企業は、ニューヨーク市のとその行政と連携して、都市のインフラ自体を自動運転やスマートエネルギーに合わせて変えることを目指しています。会長は元ニューヨーク市の副市長ダン・ドクトロフで、ブルームバーグのCEO兼会長でもありました。

 

 この企業も先に挙げた自動車配車企業ウーバー同様、自動車の個人所有とパーキングをこの世の中から完全に削除しようと目論んでいます。サイドウォーク・ラブズの場合は、スマート・シティといって、世界中の都市を電気から防犯、ゴミに至るまで最適化して、都市と郊外におけるスプロール現象(無秩序な広がり)をなくすことまで考えているようです。

 

 かつて都市のストリートは「ソローフェアー」(thoroughfare)と呼ばれていて、馬車と人が混在していました。そこには歩道などというものはなく、人や物が自由に通航、横断出来た場所です。今ある「道路」(road,やstreet)は、第一次大戦後の自動車社会に合わせて、たったの100年前からできたものです。それが今変わろうとしているわけです。

 

 サイドウォーク・ラブズについては、次の記事が簡潔に述べていますので、リンクを張っておきます。(「Sidewalk Labs Googleが描く、人を学習する都市とは!?」 企業.tVというサイトの配信記事 https://kigyotv.jp/news/sidewalk-labs/

 

 自動運転の未来がどうなるのか、本日の記事だけではわかりませんが、そのあらましと、それに関連した企業や人物を解説しておきます。

 

 また次の配信をお楽しみに。